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「根抵当権」の過去問をイラストで分かりやすく解説【行政書士試験H28-問31】
まずは過去問を読もう(平成28年度 問31)
問題:Aは債権者Bのため、A所有の甲土地に、被担保債権の範囲をA・B間の継続的売買に係る売掛代金債権とし、その極度額を1億円とする根抵当権を設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

- 元本確定前に、A・Bは協議により、被担保債権の範囲にA・B間の金銭消費貸借取引に係る債権を加えることで合意した。 A・Bがこの合意を後順位抵当権者であるCに対抗するためには、被担保債権の範囲の変更についてCの承諾が必要である。
- 元本確定前に、Bが、Aに対して有する継続的売買契約に係る売掛代金債権をDに対して譲渡した場合、Dは、その債権について甲土地に対する根抵当権を行使することはできない。
- 元本確定前においては、Bは、甲土地に対する根抵当権をAの承諾を得てEに譲り渡すことができる。
- 元本が確定し、被担保債権額が6,000万円となった場合、Aは、Bに対して甲土地に対する根抵当権の極度額1億円を、6,000万円と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求できる。
- 元本が確定し、被担保債権額が1億2,000万円となった場合、甲土地について地上権を取得したFは、Bに対して1億円を払い渡して根抵当権の消滅を請求することができる。
抵当権と根抵当権の違い
根抵当権は継続的な取引を極度額まで担保する物権です。
抵当権の場合
例えば、Bが車の製造メーカー、Aが車の販売店とします。
車の引渡しが先で代金を後払いとすると、Bに売掛金債権が発生します。
売掛金=まず納品(商品の引渡し)が行われ、後日代金の決済が行われる掛取引をした場合の代金を受領する権利のこと(wiki引用)。
例でいうと、車を引渡し、代金の支払いを後日請求出来る権利が売掛金債権。

A、B間の1回の取引で500万円の売掛代金債権が発生したとします。
ここで、BがAの土地に抵当権を設定すると500万円の売掛代金債権はAの土地により担保されることになります。
しかし、このような取引が頻繁に行われて、取引をするたび抵当権を設定するのは大変ですよね。
まとめて出来ないこともないですが、無担保状態の期間が出来ていまいます。
根抵当権の場合

先ほどと同様、Bが車の製造メーカー、Aが車の販売店とします。
根抵当権であれば、枠を1億円と決めたら、その枠まで発生する債権を根こそぎ担保します。
いちいち売掛金が発生する毎に抵当権を設定する必要はありません。
注意しなければならないのはどんな債権でも担保する訳ではなく、当事者が決めた特定の取引により生じる範囲内の債権となります。
それでは、根抵当権の三大要素を覚えましょう。
根抵当権の三大要素
極度額
いくらまで担保するのか決めるのが極度額の設定。問題文では1億円。1億円まで担保するということ。
債権の範囲
例でいうと、自動車の販売に関する取引から発生する債権の範囲を担保します。
債務者
Aのこと。
付従性・随伴性の緩和
確定前の根抵当権には付従性がありません。
付従性とは、「担保物権が成立するためには被担保債権の存在が必要であり、担保物権は被担保債権の消滅に従って消滅するという性質をいう」(wiki引用)。
先ほどの例でいうと、売掛金債権がなくても根抵当権は成立するし、売掛金債権が弁済などで消滅しても根抵当権は消滅しません。
また、確定前の根抵当権には随伴性もありません。
売掛金債権が譲渡されても根抵当権はついていきません。
根抵当権の元本確定

不特定の債権を担保していた根抵当権が、特定の債権を担保するようになり、以後発生する債権を担保しないよう確定すること。
図は売掛金100万円を担保するということで確定。
確定した根抵当権は、通常の抵当権とほとんど変わらなくなります。付従性と随伴性もあります。
以下、元本確定事由の例
元本確定期日の到来
元本確定請求があった時
競売の申し立てがあった時
などなど
債権の範囲の変更【肢1の解説】

後順位抵当権者の承諾
後順位根抵当権者Cは、先順位のBがいることを確認できる状況で抵当権を設定します(登記がされていれば誰でも確認出来る)。
債権の範囲が変わったところで、1億円という枠は動きません。
何の取引から生じた債権を担保しようが、1億円まではBが優先することに変わりはないのです。
債権の範囲を変更するのに、後順位抵当権者Cの承諾は必要ありません。
債務者を変更したとしても、Cの承諾はいりません。
後順位抵当権者の承諾が必要となるのは「極度額」を増額する場合です。
よって肢1は誤り
(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)
第三百九十八条の四 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
3 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
売掛金の譲渡【肢2の解説】

肢2解説.確定前の根抵当権は随伴性がありません。
よって肢2は正しい
根抵当権の全部譲渡【肢3の解説】

肢3解説.元本確定前の根抵当権を全部譲渡するには根抵当権設定者の承諾がいります。
本問は設定者と債務者が同一ですのでAの承諾でオッケー。
よって肢3は正しい
第三百九十八条の十二 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
極度額減額請求【肢4の解説】

肢4解説.元本確定後の根抵当権は、設定者から極度額の減額請求をすることが出来る。
よって肢4は正しい
第三百九十八条の二十一 元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。
根抵当権の消滅請求【肢5の解説】

肢5解説.元本確定後の根抵当権の設定者(物上保証人)、第三取得者は極度額に相当する金銭を支払うことで根抵当権の消滅請求をすることが出来る。
よって肢5は正しい
第三百九十八条の二十二 元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。

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